INTERVIEW対談
「寄り添うチカラ」をさらなる強みに
アイティフォーに足りないことをお持ちの阿部さんを社外取締役候補に。
役員全員一致でお願いしました(佐藤)
2021年の初めに社員を通じて阿部さんを推薦してもらい、エスケーエレクトロニクス(以下、SKE)と写真化学の企業サイトを拝見しました。そして、1868年創業と大変長い歴史を持つ企業グループであり、「ものづくりを通じて健康と笑顔のあふれる世界を」というメッセージを掲げられているのを知りました。両社は、歴史もつくるものも異なりますが、非常に近い価値観があるのではないかと共感を覚えました。
ちょうどその頃、当社も創業50周年に向けた新たな理念の策定に取り組んでいました。決定したのは「『寄り添うチカラ』で人々の感動と笑顔を生み出す」。社会やお客様のニーズが多様化する中、システム(IT)と業務(BPO)を通じて、企業の皆様だけでなく、その先にいるユーザーの皆様のさまざまなライフステージをサポートし、人々の感動と笑顔を生み出す社会づくりに貢献していきたいという意味を込めたものです。
私はまずIT企業とお聞きして、専門外の私がお役に立てるのかと考えました。ただ、専門家の集団にさらに専門家はいらないとお話しいただいたことと、やはり企業として「笑顔」を生み出すことを目指しているというところなど、共通する何かを感じました。私自身は、幼少期に一時期、海外で育ち、アメリカの大学を卒業して最初にフランスの小さな半導体企業に就職。数年後に帰国して、家業であるSKEに入社しました。
主にRFIDやヘルスケアなどの分野で新たなビジネスの立ち上げに携わり、約20年間それなりの苦労も経験してきていますので、何かお役に立てるところがあるのではないかとお引き受けしました。私が初の女性取締役とのことで、女性活躍推進などの面でも期待されていた部分かと思いますが、実際は最初に管理本部に伺ったときには社員の皆さんが男性も女性もなくフラットにコミュニケーションを取られていたので、十分に女性社員も活躍されている印象でした。
いや、まだまだです。会社全体の女性社員の比率は16%強、女性管理職比率は6%足らずとまだまだ男性社会です。採用では3割以上は女性を採用するなどこれからです。実は女性の離職率はかなり低く、出産による退職者もいないので、「どうして?」と率直に女性社員たちに尋ねたところ、「育児しながらでも働きやすい」といってもらえました。しかし私としては、まだまだ課題があると思っています。管理本部は比較的女性比率が高い部署なので、現在、より女性が働きやすい職場モデルにしようと改革を進め、職場環境の雰囲気もがらりと変えました。これからはほんとうの意味で女性活躍を実現したく、阿部さんにぜひ、先駆者、ロールモデルになっていただきたいと期待しています。
また、新規事業開発、海外事業という点でも当社は経験が少ないので、大いにご意見をいただき、当社に足りない部分を充足いただきたいですね。
取締役会に参加して、次のステージに向けて成長していこうという
強い思いを感じました(阿部)
取締役会に参加させていただくようになって1年ほどですが、その中でも、アイティフォーが次のステージに進むために、さらに高いレベルでのインフラ整備をされていて、新しいアイティフォーに成長していこうという強い思いを感じました。私もSKEでは、会社が現状のままであることを良しとせず、チャレンジと失敗を繰り返しながら常に新しいものを求めていくという役割を担ってきましたから、そうした経験は参考としてお話しさせていただいています。
SKEはまだ創業21年ですが、写真化学の方は154年ですので、歴史が長いことによる悪い部分も、どうしても存在します。特に新規事業の決裁となると既存事業をベースに判断されることも多く、そういうガチガチの守りの姿勢を打ち破るのが私の役目です。
当社でも同様です。これまでの実績というのが頭に根強くあり、挑戦を拒む雰囲気があるのも事実です。しかし、それらの意見を軽視せずに進んでいくことも重要だと思っています。古きものの中で骨格のいいものを残して、そこに新しいものを組み合わせていく、つまり、リノベーションですね。リノベーションであれば、全員がコミットできますし、逆にゼロからものをつくる場合よりも早く新しいものができる可能性もあります。
そうですね。アイティフォーは地方の金融機関や自治体などにかなり強い顧客基盤を持っていますから、それを活かしていくことで新しい展開がいろいろと考えられます。
阿部さんは、健康やヘルスケアの分野のご経験が豊富ですね。高齢化社会の中で地方の高齢者の皆さんをどうやって守っていくかは、当社のお客様にとっても大きな課題です。
少子化の進行で高齢者を支える側の人たちがどんどん少なくなっていきますし、一方で政府は医療費削減も進めています。今後は、自分の健康は自分で守ろうというヨーロッパやアメリカのような考え方に近づいていくでしょうね。
高齢者の方に長く健康でいていただくために、社会のシステムで守るだけでなく、個人の力で守らねばならなくなったとき、誰かのサポートが不可欠です。今後はそういうスキームが必要になってくるでしょう。そこで私たちが何かできないか、潜在的なニーズをうまく探りながら、世の中が必要としているサービスを創造し、提供していきたいですね。
クラウド時代到来の前に、物の提供からサービス業への転換を明確に進めました(佐藤)
いよいよ創業50年の節目を迎えますが、アイティフォーはこれまでどのように歩んでこられたのでしょうか。
1972年の創業時は「千代田情報機器株式会社」という社名で、機器販売からスタートしており、ソフトよりもハード、と物売りの意識が強い会社でした。自分たちで物をつくるわけではなく、日本にはまだない海外の情報機器やシステムを発掘し販売していたので、当時は商社のような立ち位置だったかと。しかし、物を売っているだけではなく、より拡がりを追求し、いかにサービスという付加価値を提供していくかを、全国に拠点を開設しながら考え、徐々に立ち位置を変えていったのだと思います。
当初はITソリューションプロバイダーや、SIerなどと謳ってきましたが、どこかピンときませんでした。単なるシステムだけではなく、その先にある「人」に対するサービスですので、ある時期から物の提供からサービス業への転換を明確に進めました。
本当に時代の先端を行かれたわけですね。
クラウドの技術が出てきたことが大きな転機ですね。そもそもハードとアプリケーションを一緒に納めることが当社の基本でしたが、ハードがいらない時代が来るとなると、私たちはいったい何で生きていくのかと考えたのです。当時はハードの売上がメインでしたが、今ではハードとサービスの売上比がまったく逆転。加えてリカーリングで固定収入が得られるようになりました。
課金ビジネスやサブスクリプションは数年前くらいから声高にいわれるようになりましたが、アイティフォーはそれ以前からすでに定額サービスのビジネスモデルを構築していて、今ではそれが大きな収益を生んでいます。そうした先取りが実現できたのは、アイティフォーの皆さんがお客様ととても良いコミュニケーションを取られていて、お客様の要望そのものに応えるだけでなく、その先何が必要かを読んで提供できたからに違いないと思います。
アイティフォーという会社を知っていくほどに、「寄り添うチカラ」の高い会社だと
強く実感しました(阿部)
ご指摘の通りだと私も思います。当社は非常に強固な顧客基盤を築いていますが、それは過去から今まで社員一人ひとりがお客様と会話を重ねながら、日々、努力してきた結果として出来上がったものです。それが今、当社の最大の経営資源となっています。
つまり、アイティフォーが50年存続できた大きな理由の一つは、社員たちの価値にあるのです。そしてこれから先に、会社がさらに発展していくためにも、社員の存在が最も重要だと思っています。昨年末に特定した当社のマテリアリティ(重要課題)にも「人財の深化」を掲げています。多様な価値観・バックグラウンドが尊重され、一人ひとりが能力を最大限発揮できるよう、人財の活躍推進と育成に取り組むとともに、働きがいのある未来志向の職場環境を創造するという目標を定めました。例えば、本社12階の増床は一つの大きな取り組みで、これはコストではなく、社員への投資と考えています。
そうですね。人材育成は企業の成長にとって非常に重要だと思います。それに今は、リモートワークなどの影響で社内コミュニケーションの機会が減っていますから、SKEでも、社員のモチベーションを上げていくためにどのような活動が必要かを常に模索しています。特に若い世代には、昇進や昇給に関心がない、お給料もそこそこでという考え方の人が増えていますので。
確かに、Z世代といわれる若い人たちは、何を目指して仕事をしているのか。私たちの世代とは違っていて、わかりにくい部分もあります。現在、当社では人事制度改革プロジェクトを立ち上げ、評価の仕組みや働き方の制度を見直して、社員の働きがいを増やしていくことを目指しています。その基準点を設けるため、まず、従業員エンゲージメント調査を実施しました。しかし、アンケートの結果を見ても、どうすれば会社に対する期待や仕事に対する満足度が向上するのか、ヒントすら見えてきません。
そこで、営業の1年生から7年生までに声をかけて数十名に集まってもらい、グループに分かれてセッションを行ったのです。すると、同じ社内で働いていながら「はじめまして…」と自己紹介する人も多く、皆それぞれに仕事に対する悩みをいくつも抱えていて相談する相手も足りていないということがわかりました。私としては、これが当社の現実なのか…とかなりショックを受けました。これはもう定期的に社員と対話する機会を設けて、もっともっと元気になってもらわないといけないと。
若手社員はもちろん、トップがあらゆる階層と直接話ができる機会は常々、持つべきだと思いますね。悩みを吐き出させてあげることがとても重要です。
そうですね。今回も調査結果を見て、私たちが察してあげられないプレッシャーや事情があるのではないかと気になる部門があったので、本音でじっくり話をする機会を設けました。結果として、もっと社員が安全に、安心して働ける環境をつくり、それを社員たち皆に伝えていかなければいけないと強く実感しています。
もう一つ企業価値向上という意味合いで、広告などを活用して外から見た会社の見え方を変えていくことも社員のモチベーション向上の一助になるのではないでしょうか。アイティフォーは金融機関の債権管理システムに関して日本全国の圧倒的なシェアを持つほか、携帯基地局などのインフラといった人々に身近なシステムを数多く手がけていますが、一般の人がそれを知る機会は非常に少ないと思います。ちなみに私の会社でもラジオで企業コマーシャルを少し行っただけで、社員とその家族がものすごく喜んでくれた経験があります。
おっしゃる通りで、当社は今まで企業の宣伝、広報活動にはあまり積極的に投資をしてきませんでした。
私もアイティフォーという会社を知っていくほど、お客様が次のライフステージに行くたびに遭遇する新たな課題の解決をする際に、いつも必要なサポートを提供していく「寄り添うチカラ」の高い会社だと強く思いました。それをぜひ広く皆さんに知っていただきたいですね。そしてこれからの50年も、人々に寄り添える会社であるために、その原動力である社員の方々が、社会に必要な情報基盤やインフラを担っているというプライドを常に感じて、意欲的に働き続けることができる環境をつくっていきたいと思います。
はい、当社の事業はBtoBtoCであり、最終的にはエンドユーザーに対して価値を生み出していると常に意識しています。人が何かを行うとき、例えばものを買う、使う、サービスを受ける時に、満足できないものには対価を払わないですし、次は使わない、もう買わないとなるでしょう。そのユーザーが真に満足するものをつくるには、お客様に言われたことだけではなく、もっとお客様の話に耳を傾け、寄り添っていくしかないのです。当社はそれを行ってきたからこそ今があり、さらにそこを強くしていきたいと考えています。
そして、世の中の変化はますます加速していますから、変化に対応するスピードではどこにも負けない、そんな会社に成長したいと思います。アイティフォーの社員は、まじめで信頼できるメンバーがそろっています。これから50年、社員の皆さんのチカラでたくさんのサプライズを生み出し、会社が変化していくことを願っています。
代表取締役社長 佐藤 恒徳
岐阜県出身。1964年12月14日生まれ。
|1998年
株式会社アイティフォーに入社
|2008年
執行役員ソリューションシステム事業部副事業部長、翌年事業部長
|2011年
取締役執行役員ソリューションシステム事業部長
|2016年
取締役常務執行役員フィナンシャルシステム事業本部長
|2017年
代表取締役常務執行役員フィナンシャルシステム 事業部長
|2018年
代表取締役専務執行役員事業本部長兼 フィナンシャルシステム事業部長
|2019年
代表取締役社長執行役員事業本部長
|2021年
代表取締役社長就任
社外取締役 阿部 和香
京都府出身。1972年6月15日生まれ。
|2004年
株式会社エスケーエレクトロニクス入社
|2013年
同社経営戦略室副室長
|2014年
株式会社写真化学入社、同社取締役
|2019年
株式会社エスケーエレクトロニクス取締役事業開発室担当(現任)
|2021年
株式会社アイティフォー社外取締役就任
撮影場所:青蓮院門跡 (しょうれんいんもんぜき)
天台宗総本山比叡山延暦寺の三門跡の一つ。
古くより皇室と関わりが深く、格式の高い門跡寺院。
〒605-0035 京都府京都市東山区粟田口三条坊町69-1
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