RPA 業務自動化ソリューション(NICE RTSシリーズ)

RPAお役立ち情報08 RPA導入を成功させるために必要な事前準備

メール

掲載日:2018年5月17日

RPAお役立ち情報08RPA導入を成功させるために必要な事前準備

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールを導入するまで、担当者はどのように進めればよいのでしょうか。検討から導入までの流れをご紹介しながら、本番導入まで企業側で行うべき事前準備とその重要性についてご説明します。

働き方改革を考える上で、RPAツールを導入している企業がますます増えています。では、RPAツールを導入するまで何を準備しておけばよいのでしょうか。
まずはRPAツールの導入の流れをご紹介しましょう。なお、以下はRPA導入をスムーズに進めるための望ましいアクションです。各企業の事情に合わせて効率よく検討していただくことが良いのではないかと考えています。

RPAツールの導入の流れ
@RPAツールのコンセプトと特徴を理解する

RPAツールは、基本となる技術によって特徴が異なります。まずはそれを見極めるためにも、ベンダーからRPAツールの情報を収集してください。デモンストレーションの活用は、RPAツールのコンセプトや特徴を理解する上では非常に効果的です。RPAツールの機能だけでなく、ガバナンスが図れるかどうかについても考慮する必要があります。またツールによって得意分野が異なりますので、対象アプリケーションとの親和性、業務の重要度(ミッションクリティカル)などをもとにツールを見極めなければなりません。
ちなみにベンダー側は、RPAツールをどのように導入するかを検討するため、企業に対して業務内容や状況をヒアリングします。もし企業側で既にRPAを適用したい業務の棚卸ができているのであれば、この段階でベンダーと十分に情報を共有しましょう。より良い提案を受けることができます。


A業務フローの整理、業務の棚卸し

これは、どの業務にRPAツールを適用するかを検討する際に非常に重要な過程です。主体はあくまでも導入企業です。どう変わりたいか、業務改革したいかを意思決定するのは導入企業自身だからこそ注力すべきです。
現行の業務フローを整理する際、同時にその業務で使われているアプリケーションの棚卸しも行います。すでに業務内容がマニュアル化されている場合も、実務どおりの内容か、形骸化していないかを確認しましょう。ベンダーや現場管理者と共同で業務フローの整理を進めることもあります。この間、企業内の機密情報にふれることから、ベンダーとNDA(機密保持契約)を取り交わすことが多いです。


BPOC(Proof of Concept:概念検証)による検証

このフェーズではまず、これまでの業務の棚卸し結果をもとに、自動化したい対象業務を決定することが望ましいと考えています。対象は2〜3の業務で、効果を出しやすいシンプルな業務が理想的でしょう。
しかし実はこの段階で落とし穴があります。最近、次のような企業の話をよく耳にします。最初は手軽に導入できるという理由で、シンプルな業務に対して機能が制約されたRPAツールを導入したのですが、実際本格的に導入しようとするとロボットが動かない、またはこれ以上RPAツールを全社展開できない、という大きな問題にぶちあたっているというのです。このことから、最終的にどこまで業務自動化を行いたいのかを事前に想定し、その業務に使われているアプリケーションとRPAツールが本当に連携できるのかどうかをこの段階で見極めておくことが後々のRPA展開に非常に重要になってくるということが言えます。完璧に見通しを立てて進める必要はありませんが、ツールの網羅性を意識することは重要です。

さてPOCでは、RPAツールを仮導入し、RPAツールが有効であるか、RPAツールと業務との相性が合うかの見極めを行います。同時に接続性テストや既存アプリケーションとの親和性もチェックします。先ほどご説明したとおり、目先の1業務だけでなく全社展開を検討するのであれば対象アプリケーションとの疎通(コネクティビティ)確認が必要でしょう。またテストで使用するデータはテストデータで十分ですが、PCなどは本番と同等の環境を準備することをお勧めします。なぜなら異なった環境の場合、正しい検証が行えずその後の導入工程に悪影響を及ぼすことにもなるからです。POCの実施期間は、導入するRPAツールにもよりますがロボット1体あたり平均1〜2週間ほどのイメージでしょう。
ちなみに、最近ではPOCの負荷を小さくし、即本番導入に取り組まれる企業も増えています。すでに多くの企業でRPAツール導入の結果、大きな効果を出していることが明らかだからです。POCはツールのコンセプト理解が目的ですから、効率よく進めましょう。


C対象業務の範囲を確定

ここまでのフェーズで、業務の棚卸しを行い、POCの結果から業務自動化を行う対象業務とRPAツールの導入効果の見極めを行ってきました。これらの結果をもとに、RPAツールを導入する対象業務を確定します。
RPAを全社展開し、「コスト削減」「生産性向上」の効果を最大化するには、効率化したい業務の適用範囲が部門レベルか全社レベルか、定型業務か非定型業務かを把握します。そして最初にRPAを適用する業務は、できるだけ定型的で、また適用範囲が部門単位で処理件数が多いある業務を対象とすることをお勧めします。
対象業務の範囲が確定した後、ベンダーには正式な見積もりを依頼してください。


Dパイロット/本番導入

Cの決定事項から、2〜3の業務を対象にパイロット導入して効果(投資対効果も含む)を確認し、本番導入を進めます。
ところで、よく「スモールスタート」という言葉を聞きますが、これはただ単に「小さくスタートする」という意味ではありません。RPAロボットを2〜3体使ったプロジェクトから始めるのはいいのですが、その際、必ずその後の全社展開を念頭に置いて始めることは重要です。つまり全社展開しても問題ないということを確認するために「スモールリリース」するという言葉のほうがイメージいただきやすいかもしれません。
本番リリースの際、ミッションクリティカルな業務であれば、ロボットの精度を高く望まれることと思います。しかし1〜10までの工程があったとして、全て完璧を求めるとRPAの展開が遅くなります。例えば1〜6までは完璧に自動化できているならば、それでリリースすることも視野に入れてみてください。

局所的なRPAツール選定で考えられるマイナス面

ある業務でRPAツールを導入し効果が出てくると、次は他の業務でも活用を検討されるでしょう。似たような業務プロセスなら簡単に適用できますがが、適用できないとなると別のRPAツール(ロボット)を導入するしかありません。それでは効率化によるコスト削減どころか二重投資になってしまいます。ソフトウェアロボットも導入のたびに製造しなければならず、無駄に労力やコストがかさんでくることも考えられます。
さまざまな業務が網羅できるRPAツールは、同じようなプロセスをもつ業務であれば、ロボットをサブルーティン化し流用することができるため、この点でも優位性があります。これは、後のロボット工数削減にもつながってきます。
後々そうした失敗をしないためにも、あらゆる業務にあわせられ統合管理ができるRPAツールを選定することが望ましいでしょう。

対象業務選定における注意点

では、RPAツールを導入する対象業務はどのようにして選定すればいいのでしょうか。
どの業務を自動化するかを検討する際、「まずは面倒な作業をロボット化しよう」と判断する企業があります。でも、本当に優先度の高い業務でしょうか? 人では手に負えない大量なトランザクションがあるならまだしも、月に数件程度の少ない頻度の業務ならば、RPAツールを導入する費用がもったいないと私たちは考えています。恐らくそれほど大きな成果も得られないでしょう。導入の失敗にもつながります。

ではこのような失敗を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。それは「業務の棚卸し」の精度がカギになります。業務マニュアルを例にとると、実は担当者の頭の中にだけしかなくマニュアル自体は存在しないという企業が多いのが実情です。ですから必ず業務マニュアルを整理してください。業務の流れが可視化でき、改善ポイントが明確になります。そして、棚卸しは業務の担当者に加え、実際にオペレーションする人やシステム部門の人などプロジェクトチーム化して進めることが理想的です。ただし、必ずしもマニュアルどおりの工程でRPAロボットを実装するとは限りません。あくまでもマニュアルは業務を自動化する際のロボットの動きの参考書として活用するのであって、必ずしも動きそのものにはならないことが多いからです。
ユーザーインターフェイスの存在は、人が操作するために必要なものであって、ロボットにとってはインプット・アウトプットがしっかり整っていれば人が行う作業を完全になぞらえることなくショートカットして自動実行してくれます。開発工数の削減にもつながります。

業務分析ツール活用のお勧め

また業務の棚卸には、RPAツールとあわせてベンダーが提供する分析ツールを活用するのも良いでしょう。
アイティフォーが提供しているRPA製品「ナイス アドバンスト・プロセス・オートメーション(NICE Advanced Process Automation)」には、「ナイス・デスクトップアナリティクス(NICE Desktop Analytics)」というものがあります。
このデスクトップアナリティクスは、業務プロセスにおいて、誰がどの業務でどのアプリケーションを使っているのか、その処理にどれくらいの時間を要しているのか、といったデータを収集し業務プロセスを可視化します。可視化することで課題が明らかになります。あとはどの課題から解決するか、RPAツールを導入することで効果を発揮しそうな業務について優先順位を決めて選定すればいいのです。
なお、次世代のRPAでは、自動化すべき業務を自動で発見し、ロボットを自動で製造する機能のリリースも予定されているようです。

POCは本当に必要か?

RPAツールを導入する際、POCは必ず実施しなければならないと考えていらっしゃいませんか? 
裏事情をお話しすると、これまでPOCにこだわっていたのはベンダー側でした。いろいろなアプリケーションと連携できるか否かの接続テストが本番導入後の運用に重要なポイントとなるため、自然な流れで企業の環境でその確認をするにはPOCというステップが望ましかったためです。
企業側も“ソフトウェアロボットで何ができるか”とRPAツールを試す機会としてPOCを実施してきましたが、すでに国内外で多くの企業が導入し、続々と大きな成果をあげている現状から、接続性のみ確認してPOCは行わないという企業が増えてきています。
POCを省いて導入に向かうという選択肢を想定しておくことも一考ではないでしょうか。