【導入事例】株式会社丸由百貨店様
小売業向け基幹システム「RITSクラウド」
丸由百貨店の“次の100年”支える
次の100年のために———。2022年9月1日付で鳥取大丸から改称し、同3日に営業を始めた丸由百貨店が、将来を見据えて導入した基幹システムが、アイティフォーの「RITS(リッツ)クラウド」だ。RITSは10を超える地方百貨店に採用されており、その業務に最適化された機能、従来の半分以下で済む運用費などを評価した。1台でクレジットカードやQRコード決済に対応できる決済端末「iRITSpay(アイ・リッツペイ)」も合わせ、鳥取大丸時代の21年3月に稼働。百貨店業界では往々にして、基幹システムの切り替え直後にトラブルが相次ぐが、丸由百貨店では田中秀明取締役店長が「事前に想定した範囲内でのトラブルで、ほぼ即時に対応できた」と話すほど順調なスタートを切った。1937年の創業当時の名に戻り、次代へ歩み出した同社が、その基幹システムをアイティフォーに託した理由を尋ねた。
~月刊ストアーズレポート2023年1月号より~

インタビューご出席者
※肩書きは当時のものです。
- 田中 秀明 氏 :丸由百貨店 取締役店長
- 春菜 将宏 氏 :丸由百貨店 営業企画課販促企画担当
丸由百貨店が誕生するきっかけは18年に遡る。日ノ丸グループや山陰合銀らによる事業再生ファンドの出資で設立されたティー・エー・オーが、会社分割で鳥取大丸 の百貨店事業を継承。ティー・エー・オーは鳥取大丸に商号を変更し、同9月から新たな体制で百貨店を経営してきた。大丸松坂屋百貨店との資本提携も解消されたが、商品調達や商号・商標使用のライセンス契約は締結。同契約も22年8月末で切れたが、今もマーチャンダイジングの支援をはじめ協力関係は続く。
新体制は、日ノ丸グループの企業の出資や金融機関の貸付金などのバックアップを得ながら、「地域密着型百貨店の確立」、「鳥取駅前中心市街地活性化への積極的関 与」、「日ノ丸グループと一体となった地域経済への貢献」といった指針に基づき、経営再建に取り組んだ。その柱として、19年秋と20年春の2期に分けて29年ぶりとなる大規模改装を実施。百貨店と専門店、コミュニティ施設を融合させた「複合機能型百貨店」の構築を目指した。
新型コロナウイルス禍の影響が大きく、売上げは計画通りとはいかないものの、客層の拡大などに成果は表れつつある。22年は食品売場の再編にも着手。低層階のリニューアルも見据える。
さらに、22年9月1日は丸由百貨店に生まれ変わるとともに、中期経営計画も始動。22年度(22年9月〜23年8月)を初年度として、改めて増収増益を急ぐ。その達成に向けては、改装をはじめとする店舗への投資だけでなく、新客の開拓や既存顧客の買上げ促進につながる販促、従業員の業務効率の改善なども不可欠だ。そしてそれを支えるのが、基幹システムや決済端末。アイティフォーをパートナーに“働き方改革”が進む。
「農道をF1で走る」から脱却し「身の丈に合う」を目指しました
———アイティフォーのRITSクラウドとiRITSPayを採用した経緯を教えて下さい。大丸松坂屋百貨店との資本提携を解消されたのが18年9月ですが、やはりターニングポイントでしたか。
田中 私は銀行から来て4年以上経ちますが、地域の金融機関や行政、民間企業らが鳥取駅前に百貨店を「残す」という思いから、プロジェクトチームが組織されました。身を置いてまず、「銀行とは違い、モノを売る楽しさがあるな」と感じたのを覚えています。
当時のポイントは2つでした。1つ目は名称変更、2つ目は経費の削減です。1つ目については、いずれはライセンス契約の満了に伴う名称変更が避けられず、生き 残るためには館全体の魅力度の向上、ひいては大規模改装が新会社の責務でした。
大規模改装には約2年間をかけ、20年4月4日に完成しましたが、象徴的なのは催事場の廃止です。催事場があった5階は、当社の企業理念「鳥取を笑顔の溢れる街にする」にも基づき、鳥取市男女共同参画センター「輝なんせ」、飲食店、レンタルスペース、フィットネス、イベントステージなどで構成。屋上も含めて「トットリプレイス」と名付けました。ポップアップショップや催事に特化したフロアですが、総じて成功を収めております。
2つ目については、資本提携を解消した後も大丸松坂屋百貨店の基幹システムを先方のご厚意で使用させて頂いていましたが、いずれは自前に切り替えなければなり ません。そもそも、資本提携解消後は大丸松坂屋百貨店の使用項目の制限もあり、全ての機能を利用していたわけでもありません。一方で費用負担もあまり変わらずでしたから、当社単独の規模からすれば大き過ぎるシステムだと感じていました。
従って、基幹システムの刷新は1年半〜1年の前倒しで検討を始めました。オーバースペックで、言うなれば「農道をF1で走る」状態からの脱却、身の丈に合った 基幹システムの模索です。
最も重視したのは「今の基本項目(=機能)が可能かどうか」と費用です。基本項目とは毎日の売上げ管理、顧客管理、友の会、外商、商品券、ギフト券などで、費 用をどこまで抑えられるかもカギでした。
加えて、当社は専門人材を欠き、デジタルに不慣れな年配の従業員も多いため、できるだけ使い方が簡単で、抵抗感がないシステムが好ましいです。
恐らく5〜6社に資料を請求しました。当初は「スマレジ」(編集部注:スマートフォンやタブレット端末などを用いたPOSレジ)を「導入しやすくていい」と思い、 2度ほど訪問して説明を受けましたが、基本項目や規模などの面で難しいと結論付けました。例えば友の会は百貨店業界に特有の組織ですが、「それは何ですか?」というレベルでしたからね。
———百貨店業界の“共通言語”が通じないと、ゼロからのスタートになりますし、時間や労力が嵩みますよね。百貨店業界、とりわけ地方百貨店に支持されるアイティフォーには無縁ですが、いつ接点を持ったのですか。
田中 2019年頃と記憶しています。きっかけは、当社が発行するクレジットカ―ドなどを受け持つ信販会社からの紹介です。最初にパンフレットを見て、説明を受けたのですが、パンフレットにはそうそうたる百貨店のロゴが並んでおり、安心感がありました。それから6〜7人の視察団を組み、RITSのユーザーである企業に足を運び、担当の方に詳しく説明してもらいました。個人的な見解としては、RITSはパッケージのままで十分に当社の業務に対応できると感じましたし、実際に必要最小限のカスタマイズだけで使用しています。
———視察で印象に残った話はありますか。
田中 私の1番の不安は顧客管理でしたが、視察先の担当の方に「以前は別の会社に管理してもらっていたが、上手く移行できた」と聞いて安心しました。外商も含めて顧客管理は大切ですからね。もう1つはレジです。基幹システムを一新すると、レジの使い方もゼロから学ばなければならず、何十年も使い慣れた方には抵抗感があります。レジには当社同様にご年配の方が多く、同じ悩みを抱えなかったか聞いてみましたが、問題なさそうでした。
RITSは必要最小限の機能を網羅しており、当社と同規模の百貨店でスムーズに使われていたので、最後は値切りまくって(笑)決めました。細かい仕様は「売場 が欲しい機能」と「経営の判断」(=コスト)のせめぎ合いでしたが、「これとこれはパッケージで(パッケージの機能に合わせる)」、「これはいずれカスタマイズで」、「これは不要」と判断していきました。当社の場合、オービックビジネスコンサルタントが手掛ける「勘定奉行」と契約しており、RITSと連携させるプロセスも必要でしたが、それを加味しても業務効率は大きく改善できました。
稼働から約1年半が経ちますがトラブルは少なく、解決も迅速です
———決定から稼働までのスケジュールは、どうやって固めていったのですか。システムに精通する人材は貴社に限らず百貨店業界内に手薄で、主導する組織を立ち上げられるのは超大手くらいですし、従業員の混乱や不満を防ぐためには事前に説明や勉強会なども求められます。
田中 あらかじめ何度もやりとりしてスケジュールの大枠を定めた上で、「ここまでにこれを」などと道筋を付けていきました。組織は当社としても1人しか専任を配置できませんでしたが、春菜将宏事業統括部営業企画課販促企画担当が兼任で手伝ってくれました。導入が決まった後に最優先すべきは売場です。勉強会を開き、どれだけ教育を充実させられるか。それが混乱や不満を抑止します。
勉強会を行うに当たっては、教科書が必要です。アイティフォーさんにその叩き台を送ってもらい、「どう丸由百貨店版をつくるか」を何週間にも亘って協議。丸由百 貨店版の教科書を完成させました。教科書は稼働の半年くらい前から今に至るまで使用しており、内容は定期的にチェックして改訂しています。教科書は実務に即していなければ意味がなく、改訂時は売場に最も近いマネジャーの目線を採り入れています。具体的には、棚卸資産の評価方法を「個別法」から「売価還元法」に切り替えた時、そもそもの考え方や計上の仕方も変えなければなりません。それを従業員に理解してもらう上で、教科書は役立ちました。
春菜 半年以上は教育に費やしました。工夫としては、売場単位でキーマンを任命。キーマンに随時教え、他の従業員に啓蒙してもらいました。キーマンは他の従業員に教えると復習になりますし、従業員も知らない人から教わるより学びやすいのではないでしょうか。
正直に話せば、勉強会自体への不満は多かったです。中でも、習熟したレジの業務の覚え直しには抵抗感が顕著で、長年旧システムのレジに慣れ親しんだ従業員からは「またゼロから覚えるなら辞めたい」という声も寄せられました。しかし、新たなレジは使ってみると簡単で、前向きな従業員も多かったです。
———アイティフォーとのやりとりで、印象的なエピソードはありますか。
田中 アイティフォーさんの社員様が稼働の直前はずっと寝泊りし、前日の深夜には天井に無線機器を設置したり、POSのハードディスクを交換したり、不具合が生じないように当社の従業員とともに明け方まで奔走してくれました。当然ですが、百貨店の営業時間内には基幹システムを切り替えられず、閉店と同時に作業を始め、開店までに完了させなければなりなせん。私は本当に動くのか不安でしたが、アイティフォーさんから技術部隊が来て“基地”をつくり、1つひとつの取引や項目などを全てチェックしてくれて、新たな基幹システムは無事にスタートを切りました。
———稼働から約1年半を経過しましたが、大きなトラブルなどは起きていませんか。
田中 システムは、どうしても不具合が起きます。アイティフォーさんは鳥取県に拠点がなく、メールでの連絡が主で、不具合をすぐに把握するのは困難です。結果、早々に直る場合も時間がかかる場合もありますが、これまでは全てのトラブルをクリアしてくれています。
直接は聞いていませんが、経理の担当者は大変かもしれません。会計の照合時に2つのシステム(RITSと勘定奉行)を通さなければなりませんからね。
当社は地域のシステム開発会社と業務委託契約を結び、長く社員を派遣してもらっていますが、その存在が非常に大きいです。上述したように当社はRITSをパッケージのままで導入しましたが、それで可能な範囲でカスタマイズしてくれます。
記憶に強く残るのは、昨年の中元商戦です。ギフト管理システムが大丸松坂屋百貨店からアイティフォーに切り替わって不具合が出る中、速やかに直してくれました。業務がスムーズになり、次の歳暮商戦に生きました。
毎月の運用費は約50%削減できます
今後は分析に活用し増収につなげます
———自前で専門人材を抱えられなくても、地域の企業とウィンウィンの関係を築ければ、トラブルを防げるという教訓ですね。百貨店業界にとって参考になるのではないでしょうか。他方、お客様の反応はどうですか。様々な決済方法に1台で対応するiRITSPayは、目に見える形でお客様の利便性を上げてくれますが。
田中 お客様は「PayPay(ペイペイ)」や「楽天Pay」、「au Pay」といったQRコード決済を有益と捉えています。もう1つは、当社が発行するポイントの視認性や利便性の改善です。以前は紙に保有するポイントを記してお客様に送っており、しかも500ポイント貯まるまで使えなかったのですが、今はレシートに表示されますし、1ポイント単位で利用できます。これらはRITSのメリットです。

———21年5月28日にアイティフォーが発表したリリースには「今回のシステム刷新により、従来の基幹システムに比べて毎月の運用費が50%以上削減します」と記されています。基幹システムの刷新を検討する百貨店にとって「50%以上」のインパクトは大きいですが、実現しましたか。従業員の業務効率の改善についても、いかがでしょう。
田中 もうすぐ、機器などの5年間のリースが終わります。その後は50%くらいの削減を見込めます。業務効率の改善に関しては、マネジャーから「どう顧客管理=売上げ伸長につなげるか」という声が上がっています。業務効率の改善は進んでおり、今後は各売場で分析に活用して売上げを伸ばしてほしいです。すでに各売場は十分に考えてくれており、経営陣としても次の展開を模索しています。RITSクラウドがコストカットだけでなく、増収にも結び付けば、より理想的ですね。
百貨店にとって、お客様とどうつながるかは永遠の課題です。手段はデジタル、アナログを問わず、接客や電話、ダイレクトメールも疎かにはできません。デジタルによるアプローチも交え、お客様の1人ひとりにいかにマッチングさせ、来店や買上げにつなげるか。それを追求していきます。
———コロナ禍の「第8波」は懸念材料ですが、第7波が一段落してからの百貨店業界は復調傾向です。御社の足元の商戦はいかがですか。
田中 9月から丸由百貨店として営業しており、お陰様で新店オープンから多くのお客様に足を運んでいただきましたが、恐らく第8波への警戒感も相まって、前年並みに落ち着いてきてしまいました。12月は百貨店業界にとって最重要の時期であり、やや心配ですが、今日(取材は11月23日)からの北海道展は好調です。第8波が到来するか分かりませんが、いかに売上げを伸ばしていけるか。手を尽くしていきます。
パッケージは完成度が高く、自由度に優れビフォーケアやアフターケアも充実しています
———基幹システムの刷新を検討する同業他社に、先行者としてメッセージを頂けますか。
田中 基幹システムについての悩みは、コストの面が大きいと推察します。業績がシビアな時代だからこそですね。もう1つは、お客様に迷惑をかけずに導入できるか。コストと同様に関心が強いのではないでしょうか。RITSクラウドは、どちらも解決してくれます。多くの百貨店を支えるパッケージは完成度が高く、オプションによる自由度にも優れます。ビフォーケアやアフターケアも充実しています。従業員には抵抗があったと言いましたが、レジの使い方も実は簡単です。パターンは10種類くらいで、かつシンプルですから、私が急遽売場に入った時も30分ほどでマスターしました。
———アイティフォーへの提言はありますか。「これまでは全てのトラブルをクリアしてくれている」とおっしゃいましたが、より良い関係を育むためには時に要求も必要です。
田中 タイムリーにやりとりできたら、もっと安心できます。これは技術的に解決できるのか分かりませんが、お客様がクレジットカードで支払う際の待ち時間は長い気がします。POSごとに計上できた過去とは異なり、現代ではクレジットカード情報が非保持化され(編集部注:国際水準のセキュリティを実現するため、自社で保有する機器やネットワークでカード情報を保存、処理、通過させない。改正割賦販売法で義務化)、その過程で生じるタイムロスかもしれませんが、それでも遅いのではないかと感じます。
末尾になりますが、百貨店業界を取り巻く環境は全国的に厳しいです。コロナ禍で一喜一憂してきた約3年間ですが、百貨店は変わり続けなければなりません。「高級感」だけにとらわれず、お客様のニーズに合った店づくりが肝要です。さりとて“らしさ”も忘れない、新たな百貨店を目指さなければなりません。
鳥取駅前の賑わいを失ってはいけませんし、その中心を担うのが当社です。より一層賑やかしていきたいですし、そのためにも地方の新たな百貨店のスタイルを確立します。
※当記事は、株式会社ストアーズ社の許諾を得て転載しています。
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掲載日:2022年12月28日