【導入事例】石巻市様

業務委託で県内最下位の市税収入率が大幅に向上
震災復興で生じた人員不足をBPOサービスが支える

東日本大震災の被災地である宮城県石巻市は、長期間にわたり復興業務への対応を迫られ慢性的な人員不足に陥りました。納税課の職員数も削減され、滞納整理業務の対応が困難となり、平成26年度にアイティフォーへの業務委託を行いました。平成28年度以降はアイティフォーのBPOサービス(※)を継続採用し、令和3年度には、委託範囲の大幅な拡張。収入率の向上と職員負担の大幅な軽減を実現した経緯や、現在の運用状況について石巻市総務部納税課に話を伺いました。

<インタビューご出席者> 肩書きは当時のものです。
  • 阿部 浩章 氏 :石巻市 総務部 納税課長
  • 南 俊輔 氏 :石巻市 総務部 納税課 徴収係長
石巻市役所外観

(※)BPO事業は現在、子会社アイティフォー・ベックスが承継し、運用しています。

収入率の低さと震災後の人員激減が業務委託導入の契機に

石巻市納税課は、各種市税に加え、国民健康保険税・介護保険料・後期高齢者医療保険料などの複数の債権の徴収および滞納処分、収納管理、口座振替に関する業務を担っています。平成22年には15名で徴収業務を担当していましたが、現在の正規職員数は半数以下に大幅に縮小されました。

阿部課長

石巻市では東日本大震災が発生する以前に、慢性的な収入率の低さが課題となっていました。総務部納税課長の阿部 浩章氏によると、市税と国保税の収入未済額は宮城県内の中で最下位という状況に、県からは職員派遣による支援まで検討されていたといいます。

これに追い打ちをかけたのが震災による被害でした。「震災後の復興業務へ市役所の人員が充てられたことで、納税課の体制も一気に手薄になったのです。被災された方も多く、高齢化と人口減少も相まって臨時職員も集まりにくい。せっかく採用しても途中で退職してしまう方もいて業務が回らなくなっていました」(阿部氏)

当時から納税課に在籍し続けている阿部氏は、「税の業務は5年以上の経験を積まないと一人前にならない。ところが正規職員も次々と異動してしまいました」と深刻な状況に危機感を抱いていたといいます。

プロポーザル方式でBPO業務を民間委託

民間委託を意識したきっかけは、同じ県内にある仙台市との縁でした。阿部氏がある会議に出席した際、仙台市の担当課長から「うちではアイティフォーにBPO業務をお願いしているがとても助かっている」という評判を聞いたといいます。入札を経て平成26年度からコールセンター業務を委託し、1年間試みたのがスタートでした。

平成28年度には、コールセンターから事務業務中心の補助業務に切り替えてアイティフォーと契約を締結。令和6年度からは、プロポーザル方式に変更し今日に至っています。「民間委託に対して庁内から反対意見がほぼ出なかったのは、仙台市での成功例があったことが大きかった。アイティフォーはすでに実績があり信頼できる企業だという安心感があったのではないでしょうか」と阿部氏は振り返ります。

阿部課長

配置スタッフ数も段階的に拡大し、平成26年の3名から平成28年の業務拡張時に6名、その後8名を経て、令和3年度には15名体制へと移行しました。この時点で、並存していた会計年度任用職員をなくし、その業務をまるごと委託に切り替えました。その際、在籍していた会計年度任用職員の中から、経験豊富な人材をアイティフォーが引き継いで採用するという形で、業務の継続性を確保しました。

効率的な分業体制の確立により差押件数が大幅に拡大

南係長

現在の委託スタッフは15名です。アイティフォーの教育体制と、現場のOJTによって、高い専門性を発揮できる仕組みが整っています。

納税課徴収係長の南俊輔氏は、「4年前に納税課に着任した時、業務がこれほどシステマチックに動いていることに驚きました。財産調査からその結果差押えに至るまでの一連の流れが分業体制で確立されており、正規職員は判断と指示を行うマネジメントを、委託スタッフが補助業務を担う。このサイクルが差押件数の拡大に直結していると思います」とその効率性を評価します。

その効果は数字にも表れています。震災前の差押件数は年間367件で、そのうち96件は自動車税の還付金充当でしたが、直近では924件にまで伸びています。「職員だけで差押1件の書類を準備すれば数日かかってしまいます。しかし、委託スタッフと連携することで、朝に依頼すれば夕方には書類が上がってくるようになりました」(南氏)

公権力の行使にあたる徴税行為そのものは職員が担いますが、そこに至るまでの財産調査・書類作成・催告といった膨大な補助業務を委託スタッフが支えています。「もし正規職員6名だけで対応していたら、毎日夜遅くまでかかり、休日出勤も必要な状況になっていたと思います。効果は絶大でした」(阿部氏)

近隣地域在住のスタッフを専門人材として育成

委託スタッフは石巻市内や近隣地域からの採用が中心で、主婦層の方も多いといいます。この地元採用は雇用創出に加え、業務上の強みにもなっています。

「業務では滞納者の話す言葉が聞き取れないと相談になりません。方言が強く、正直なところ私でも聞き取れないケースがあり、地元出身のスタッフでないと対応できない場面も多くその点で助かっています」(阿部氏)

阿部課長と南係長

窓口での対応についても評価は高く、「ひとことで言えばそつなく優秀です。窓口でスタッフがお客様の用件を聞き取ってくれている間に、職員が端末で情報を確認して対応準備ができる。このワンクッションが業務の流れを格段にスムーズにしています」(阿部氏)。納付なのか相談なのか、内容によって次のアクションが変わる窓口業務において、職員とスタッフの役割分担は明確なルールとして確立されています。

人材育成の面でも委託の効果は大きいといいます。「個人情報のセキュリティ研修他も含めてすべてアイティフォーにやっていただける。新しい人材が加わっても、私たち職員が一から育てなくていい。継続的に専門人材を供給してもらえるのが最大のメリットです」(阿部氏)。また、南氏は「アイティフォーの管理者など長く在籍しているスタッフの方は専門的な知識も豊富で、逆に私が教えていただくこともあります」と語っていただきました。

SMS催告で滞納者へのアプローチに成功

令和6年度から新たに導入されたのが、SMS(ショートメッセージサービス)を活用した催告です。導入前、阿部氏はその効果について懐疑的でした。「他の自治体の実績資料を見ても大都市ばかりで、石巻のような地方都市で効果があるのだろうかと正直思っていました。詐欺メールと疑われるのではないかという懸念もありました」。

こうした不安を払拭するため、事前の準備を徹底しました。石巻市のホームページにSMSの送信元電話番号を掲載して市民が検索で確認できるようにして、記者発表・市報・ホームページで広く周知を実施しました。また、携帯電話番号の収集・更新にも地道に取り組み、国保の手続き時や電話でのやりとりなど、あらゆる機会に番号を聞き取って情報をアップデートし続けました。

導入後の反応率は約25%に上ります。「手紙で文書を何回送っても読んでいただけなかった滞納者が、SMSを送ったらすぐ反応してくれた例もあります。若い世代には特に有効で、今後は口座引き落としができなかった場合の通知など、さらなる活用法も考えられるかなと思っています」(阿部氏)

阿部課長と南係長

収入率向上の成果と提案力の高さを評価、「不可欠な存在」へ

平成28年度のアイティフォーとの本格的な連携開始以来、市税の収入率は着実に向上しています。市税全体の合計収入率は、平成28年度の94.9%から令和4年度には97.4%に、現年度収入率は平成28年度の98.6%から令和4年度には99.1%にへと改善しました。

南係長

業務委託が定着した現在、若い職員は「この体制が当たり前」と感じています。それだけに、阿部氏は「委託がなくなった時の大変さを知っているのは私だけです。可能な限りこの業務委託は続けていかないと困ります」と危機感を持って語ります。

「職員数は今後さらに減っていく可能性もあります。そうなった時に、職員はマネジメントに特化し、実務はBPOで補完するという体制を構築していくことは不可欠です」(南氏)

また、南氏はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)や、財産照会の電子化対応など、業務のDX化に向けたアイティフォーの積極的な提案姿勢を高く評価しています。阿部氏も「他の自治体でやっていることも『こういうのがありますよ』と情報を提供してくれる。それがいい刺激になっています」と語ります。

高齢化率が高い石巻市では、業務のDX化とともに、人手による窓口対応の充実が引き続き重要なテーマです。これからもSMSのような催告手法を取り入れながら、人的サービスの向上も図り、ハイブリッドな体制づくりを目指していくとのことです。

集合写真
(インタビュアー・文/津田 潤、写真/富貴塚 悠太)